不動産・土地利用などの地理的な空間データを用いた計量分析・空間統計解析と地理空間情報に関連する学際的研究を得意とする知的で開かれた研究者集団

研究プロジェクト

 

我が国の空間情報産業

測量産業を取り巻く現状

測量業者は、2006年3月31日現在、14,161業者が国土交通省(国交省)に登録されている。
測量産業は「空間情報社会」において中核を担う産業への転機を迎えている一方で、公共事業の減少や技術革新への対応など、業界が直面する問題は多い。
全測連が2004年にまとめた「測量設計業の展開戦略」では、・「再編・淘汰は不可避である」と業界団体として危機感を表している。
しかし、客観的データからの分析は十分なされているとは言い難い。
本研究では、業者ごとの財務データを用いて、測量産業の費用関数を推計し、「規模の経済性」という概念から、業界の再編のあり方について考察する。

■論文

山本純・堤盛人:pdf我が国の測量産業に関する一考察
日本写真測量学会 平成19年度年次学術講演会発表論文集,pp.103-106,2007.
※本ファイルは発表後に修正を行ったものです。訂正の内容についてはpdfファイルの中身をご覧下さい。

測量業者登録簿の利用

測量業者登録簿の利用

測量業者登録簿の利用
■既存分析・統計とその問題点

既存の統計は、おおよその傾向を把握するには適しているが、規模も業務内容も様々で、約14,000社にも上る測量産業の実態を把握するには、よりミクロなデータが必要不可欠である。
しかし、現状の統計の多くは資本金別等の階層ごとの数と平均値しか示していないため、その中での分布や特異な業者の存在等は明らかになっていない。
また、調査対象も専業率60%以上の業者や全測連加盟業者等に限られる等、測量業者の多くが業務内容を多角化する中では、調査対象が十分であるとはいえない。

■測量業者登録簿の利用

財務諸表が公開されている業者が非常に少ない測量業者においては、 国交省の「測量業者登録簿」は財務状況を確認できる貴重な資料である。
しかし

  • ・閲覧所が全国の地方整備局等に分散している。
  • ・各閲覧所で閲覧可能な登録簿はその管内に事業所があるものに限られている。
  • ・複写は認められていない。
  • ・閲覧可能な登録簿は過去5年以内のものに限られている。

このため、登録簿から直接データを入手することは、かなりの困難であるので、本研究では建設綜合資料社発行の「測量業者要覧」を代用し、データベースの作成を行った。

専業率・資本金階層別測量業者登録数

  • 500-30000
  • 3001-10000
  • 10001-20000
  • 20001-50000
  • 50001-100000
  • 100001-1000000
  • 100001-10000000
  • 1000001-100000000
  • 10000001-1000000000
規模の経済の計測
測量産業のプレーヤー関係

測量産業のプレーヤー関係

測量業者は測量計画を立案し、実際に測量機器を用いて測量を実施し、その成果を図面やデータという形で残すという生産活動を行っている。このことから、測量の生産要素は、測量計画者の労働、測量作業者の労働、測量機器(測量業務の実施に必要である財)の三要素のみで、原材料などの中間財がほぼないことが特徴として挙げられる。
これを費用の面から考えれば、測量の費用は、測量計画者の労働コストと測量作業者の労働コスト、そして資本コストの三要素から構成されていることがわかる。なお、測量技術者とは測量士、測量士補及びその他の技術者と測量業者要覧で掲載されている従業員であり、測量作業者とはそれ以外の事務職員である。資格の有無が費用の違いを生むと仮定し、本研究ではこのように従業員を区別した。
以上のことから測量産業の費用関数は以下のように定式化する。

最小二乗法で推定する

■各変数の概要

C:総費用 測量業者が行う生産にかかった費用合計 平成15年度測量業者要覧に記載されている売上原価(千円)を利用
PS:測量技術者の賃金 測量業者要覧のデータでは個々の業者の賃金が不明であるため、代用の数値として、平成13年度賃金構造基本統計調査の測量技術者の従業員規模別平均賃金(千円)を採用
PL:測量作業者の賃金 測量技術者の賃金率と同様の理由で代用の数値として、平成13年度賃金構造基本統計調査の測量技術者の従業員規模別平均賃金(千円)を採用
YS:測量事業の産出量 測量高(金額)を測量の事業量を代用する値と考え、平成15年度測量業者要覧に記載された測量高(千円)を利用
YE:非測量事業の産出量 平成15年度測量業者要覧に記載されている売上高(千円)から測量高(千円)を引いた値で、測量以外の生産物の事業量を代用する値として利用
K:測量業者の生産に利用された資本の量 資本の量を示すことは難しいので、金額を資本の量の代用値と考え、平成15年度測量業者要覧に記載の固定資産額(千円)を利用

規模の経済性(Economies of Scale)とは各生産要素をすべて一定割合で変化させた場合の生産量の増加割合が各生産要素の変化割合よりも大きいことを意味しており、規模に対して収穫逓増ともいわれる。
仮に測量産業に規模の経済性が存在するのなら、合併により産出量の規模を大きくすることで費用を相対的に小さくすることができる。
本研究における測量業の規模弾性値SEAは以下の式によって示される。

計算式

SEA<1、すなわち生産量がt倍になったときに費用がt倍よりも大きくならない場合、規模の経済性が存在する。逆にSEA>1の場合、規模の不経済性が存在する。
分析結果は右表及び下図の通りである。
専業率90%以上の階層では全ての業者に規模の経済性が存在しているという結果が出た。また、60%以上90%未満の階層を除き、ほとんどの業者に対して規模の経済性が存在する。
しかし、現時点ではモデルの推計精度が決して高くない。従業員数、つまり一種の規模に応じた賃金率を投入したことが一因だと考えられる。各業者の人件費を別の方法で推定、あるいは入手する等の必要性が考えられる。

規模の経済性 サンプル数 平均 最低値 最大値
専業率90%以上 5970 2.399 1.151 3.106
専業率60%以上90%未満 896 -1.827 -3.846 4.329
専業率30%以上60%未満 1291 1.575 0.793 4.813
専業率0%以上30%未満 3578 1.964 0.852 3.749

専業率

専業率0%以上30%未満
専業率0%以上30%未満
 
専業率30%以上60%未満
専業率30%以上60%未満
 
専業率60%以上90%未満
専業率60%以上90%未満
 
専業率90%以上
専業率90%以上
 

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