不動産・土地利用などの地理的な空間データを用いた計量分析・空間統計解析と地理空間情報に関連する学際的研究を得意とする知的で開かれた研究者集団

研究プロジェクト

 

都市計画教育における地理情報システムの導入と活用の課題

都市計画に関する高等教育の現場では、近年、地理情報システム(GIS)の導入が進み、様々な講義や演習・実習等でその利用が一般化しつつある。一方で、単なるソフトウェアの使い方を教えるという範囲を超えた、地理情報科学教育という観点からこれらの現状を眺めた時、その教授法に関しては未だ体系化からほど遠いと言わざるを得ない。

本研究は、地理情報科学の教授法の確立に資することを目的として、まず、教材の開発を行い、その教材の利用を通して確認できた効果と課題について検討する。
本研究で対象とするのは、筑波大学社会工学類で開講されている、主として3年生を対象とした「都市計画マスタープラン策定実習」である。この実習では茨城県つくば市に隣接する土浦市を対象として、数人の班ごとに都市計画マスタープランを策定する。定量分析に力を入れており、土地利用/立地モデルと交通モデルを用いて、現状分析や将来予測、各種政策の影響評価を行う。交通モデルとしては、市販の交通需要予測パッケージであるJICA-STRADAを利用する。
一方、土地利用/立地モデルとしては、研究目的で開発され、岐阜環状道路の整備効果の評価等に実績のある応用都市経済(Computable Urban Economic: CUE)モデル(例えば、武藤・上田ら(2000))を改良した独自の教材を開発している。CUEモデルは、世帯、企業からなる経済主体の経済活動状況が立地行動まで含めて数理モデルによって記述された立地分析モデルである。モデルは、Microsoft社のExcel上で構築され、マクロ機能を用いて計算を実行するように作られており、必要なデータ等もすべて同一のファイル内に管理されている。このような利点を活かせば、FORTRAN等のコンピュータ言語に不慣れな学生にも、操作に対する抵抗が小さいと考え、Excel上で構築されたファイルを踏襲しながら、土浦市・つくば市近郊を対象としたモデルCUET: Computable Urban Economic ModelforTsukuba-Tsuchiura Area を作成した。詳細については、堤他(2005)を参照されたい。

【CUET及びJICA-STRADAで扱う分析対象地域】

図中の番号はゾーン番号を示す。図中には無いが、土浦市16〜22(7ゾーン)、つくば市23〜38(16ゾーン)、牛久市39〜42(4ゾーン)

土地利用/立地モデルに限らず、インターフェイスの充実度に対する学生の要求レベルは年々高くなっており、初期のCUETではその点では学生の要求に十分応えることができないという問題が明らかになった。また、当初、学生にとってモデルがブラックボックスとなってしまわないようにとの配慮のもとでCUETを作成したものの、モデル分析に対する興味が薄い一部の学生にとっては、結局のところ、マクロ機能の実行ボタンを押すだけのツールになってしまう危険性も明らかになった。
そこで、本研究では、モデル分析に重点をおいた実習内容に加えて、発見型の都市問題分析と計画立案を促すと同時に、CUETの弱点を克服して学生のモデル分析に対する関心を高めることを目的として、本実習にGISを本格的に導入した。具体的には、ESRI社のArcGISを用いる環境を用意し、さらに、JICA-STRADAとCUETとの連携を可能とした。この結果、学生による成果物には、GISを活用したものが増え、モデル分析の強化を超えた効果が現れ始めている。一方で、全体の実習の中でモデルやソフトウエアの説明に割く時間が増加した結果、班内での議論を行う時間の確保という面で問題が生じ始めている。

【CUET・JICA-STRADA・ArcViewの連携関係】

【本研究において整備した道路ネットワークデータの活用例:JICA-STRADAを用いた道路混雑度の計算結果】

本来、これらのモデルやソフトウェアは、立案した政策をある角度から定量的に分析するためのツールに過ぎず、本実習はそれを習得することを目的としたものではない。しかしながら、実際に学生自らがデータを用いて定量分析を行うためには、その背後にある理論を理解するとともに、実際にこれを使いこなせなければならないというのも事実である。この科目が、モデルやソフトウェアの利用を学ぶ演習ではなく、本来の実習としてその目的を果たすためには、モデルやソフトウェアの操作に慣れるための負担を如何に減らすかが、優先度の高い課題となりつつある。
なお、2006年度〜08年度の3年間、文部省科学研究費基盤研究(A):地理情報科学の教授法の確立-大学でいかに効率的にGISを教えるか-(研究代表者:筑波大学・大学院生命環境科学研究科・教授 村山祐司)(課題番号:17202023)[http://gis.sk.tsukuba.ac.jp/]の助成を得て行われた。また、筑波大学社会工学類都市計画専攻内Website
<http://toshisv.sk.tsukuba.ac.jp/jisshu/Jisshu3/report/index.html> において、本研究が対象とする実習の学生レポート等を掲載している。

■発表論文
堤盛人・武藤慎一・岡本直久
大学教育における土地利用モデルの役割と課題:筑波大学社会工学類における実習を例に,『土木計画学研究・講演集』,Vol.31,(CD-ROM 講演番号:176 ),2005.
堤盛人・大澤義明・関根喜雄
「都市計画教育における地理情報システムの導入:筑波大学社会工学類の都市計画マスタープラン策定実習を例に」,日本地球惑星科学連合2007年大会予稿集(CD-ROM J170-012),2007.
堤盛人・岡本直久・大澤義明
「都市計画マスタープラン策定の実習教育における地理情報システムの活用:筑波大学社会工学類での試み」『地理情報システム学会講演論文集』,Vol.17,pp.289-292,2008.

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