不動産・土地利用などの地理的な空間データを用いた計量分析・空間統計解析と地理空間情報に関連する学際的研究を得意とする知的で開かれた研究者集団

研究プロジェクト

 

土木計画学における空間計量経済モデルの実用化に関する研究

土木計画学における政策分析・予測・評価やそのためのモデリングにおいては、様々な空間データを扱う必要があり、結果の客観性・透明性を担保するために、常に関連の学問分野における最先端の研究成果を取り入れる努力を払わなければならない。空間データに内在する特質とこれに対する統計学的な対処の必要性に関しては、佐々木(1984)、奥村・足立・吉川(1989)によって指摘されるなど、比較的以前から土木計画学においてもその重要性が認識されている。
 社会科学的な空間データを統計学的なアプローチによって扱う学問分野として、計量地理学の流れを汲む『空間計量経済学:Spatial Econometrics』があり、特にここ数年、実用化に向けて目覚ましい進歩を遂げ、昨年、国際学会として "Spatial Econometrics Association"
が設立されている(http://www.spatialeconometricsassociation.org/)。
空間計量経済学的なモデルには様々なものがあるが、例えば spatial autoregressive error modelと称する代表的なモデルの一つでは、通常の線形回帰モデルy=xb+u(E(n)=Θ.Vor(n)=σ”1)に対し、v=xb+ε.ε=λWε+uとモデル化する。ここでwは「空間重み行列:Spatial Weight Matrix」と呼ばれ、地点/ゾーン/メッシュij 間の空間的依存(相関)の度合いを表すwijを要素とする行列である。wを用いることは、空間計量経済モデルの大きな特徴の一つである。 土木計画学においても、申請者を含めた何人かの研究者達が空間計量経済学的なアプローチに着目した研究を行っているものの(例えば、森川・鈴木・安藤 (2000))、現時点では実務で活用されるには至っていない。これは、特にサンプルサイズが大きい場合にはwを用いることに起因するモデル同定上の計算負荷が高いこと(例えば、塚井(2006))などが原因として考えられる。

【予測における空間計量経済モデルの問題点】

さらに、土木計画の実務においては、現象分析に加えて、プロジェクトの効果分析など、何らかの「将来予測」の作業を伴うことが必要とされる場合が多いのに対し、空間計量経済モデルは、そのままでは、モデルの同定に用いていない点の予測ができないという問題がある(右図参照)。
これについては、Martin(1984)がモデル同定に用いない点(右図では点4がこれに相当)のデータが欠損しているという考えに基づくモデルを提示しているが、Haining(1990)を除いて実証研究は見当たらない。一方、堤・清水・井出(2000)においては、地球統計学的手法との融合による予測手法を提示しているが、パラメータの推定や検定統計量の開発等、残された課題も多い。

これらの問題の多くは、結局のところ、空間計量経済モデルにおいて空間重み行列 W を用いることに起因すると考えられる。このことを踏まえた上で、本研究では、土木計画学における空間計量経済モデルの実用化の促進に主眼を置き、以下の4つを目的とする。

  • ■目的1 空間計量経済学によるモデル推定のための方法論とツールの整理
  • ■目的2 空間効果(空間的自己相関・不均一分散)の多面的な実証分析と実務での指針の提示
  • ■目的3 空間計量経済学のアプローチに基づく予測技法の検討
  • ■目的4 土木計画学の視点から体系的な成果書としての整理と成果の公開

なお、時間方向も考慮した時空間計量経済学的モデルにおいてはさらにいくつかの問題が加わるが、本研究ではそれらの解決は今後の課題として、ある一時点での分析に対象を限定する。

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